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大阪家庭裁判所堺支部 昭和42年(少ハ)8号 決定 1967年9月13日

本人 K・I(昭二二・五・二五生)

主文

本件申請を却下する。

理由

奈良少年院長作成の昭和四二年八月二八日付書面による本件申請の要旨は、「本人は昭和四一年八月五日大阪家庭裁判所堺支部において窃盗の非行により中等少年院送致の決定を受けて当少年院に収容されたが、昭和四二年五月二五日に二〇歳に達し同年八月四日をもつて送致後一年の収容期間を満了したが、従来院内における反則行為多く犯罪的傾向が未だ矯正されていなかつたため当少年院長の申設により同月一二日大阪家庭裁判所堺支部より本人を同年九月四日迄中等少年院に継続して収容する旨の決定を受け、爾後引続き当少年院に収容中のところ、同年八月二四日喫煙(同年七月八日頃の所為)および私本不正受授のため謹慎七日、減点一八点並びに同日付にて処遇一級下に降級する等の処分を受けたので、これらの経過に徴し本人の犯罪的傾向は未だなお矯正されていないというべきで退院措置は不適当と認めるので更に一ヵ月半再度の収容継続方申請に及ぶ」というのである。

そこで一件記録によると本人については上記のとおり当裁判所において昭和四二年八月一二日既に収容継続決定がなされており、従つて本件は再度の収容継続決定の申請であるからこの点につきかかる申請が許されるかどうかにつき判断する。

ところで、保護処分は原則として二〇歳未満の者に対してなされるもので少年院法第一一条の収容継続決定はその例外をなすものであるからその解釈は日本国憲法第三一条の趣旨よりして厳格にされねばならない。そこで少年院法第一一条第一項第二項第四項第八項によると、在院者が二〇歳に達したときまたは二〇歳に達している者で送致後一年を経過したときは退院させることを原則とし、唯これらの者の中には心身に著しい故障があつたりまたは未だ犯罪的傾向が矯正されていないため退院させるに不適当な場合があるから、その場合は少年院の長の申請に基づいて期間を定めて二三歳迄の期間に限り収容を継続する旨の決定をなし得ることとして保護目的の達成と人権の保障との調和を図り、右期間に達したときは退院させなければならない。そこで同条第二項にいう「前項の場合」とは何を指すかであるが、これは同条第一項に規定する在院者が二〇歳に達したときまたは在院者が二〇歳に達していて送致後一年を経過したときを指しているので収容継続期間を満了する在院者をこれに含ませない趣旨に解するのが相当である。つまり前二者すなわち二〇歳に達した在院者または二〇歳に達して一年を経過した在院者は収容継続申請の対象として予定され、後者すなわち収容継続期間満了の在院者は収容継続申請の対象でないと解するのが相当である。それのみならず収容継続決定は上記の如く期間を定めてなされ該期間に達したときは退院させるのであるから、右期間を定めた趣旨を無視するが如き再度の収容継続決定は許さるべきでないということもできる。唯同条第五項は特別の場合で、同項は二三歳に達する在院者の精神に著しい故障があつて公共の福祉のためその退院が不適当のときは一定の要件の下に再度の収容継続決定をなすことを認めておりまたこれを類推適用する場合もあるであろうが、要するに同項関係は再度の収容継続決定を認める特別の場合である。

叙上の趣旨からいつて収容継続決定は同条第五項関係の場合を除き一回に限つて許されるものと解するのが相当である。保護目的達成のために同条第二項第四項に再度の収容継続を認めることが妥当なりとするには法文上根拠に乏しく、また一般の再度の収容継続は本人の情操を著しく害し本人をして収容保護に対し自棄的反抗的態度に陥らせる虞なしとしないから実質的にも妥当ではない。

以上の見解により判断すれば本件申請は不適法と解されるので、その余の点について判断するまでもなくこれを却下することとし主文のとおり決定する。

(裁判官 白須賀佳男)

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